賃貸の新たな開設
既に日本は不動産ビジネスに関する限り、きわめて歴史の浅い国です。
日本の土地制度が近代化されたのは、明治6年(一873年)の地租改正条例で土地の私有が認められてからですから、その歴史はたかだか130年程度のものです。
しかも第2次世界大戦後の焼け野原から再出発してからは、ほんの50年程度しか経っていませんから、世界の先進国の不動産ビジネスの歴史から見れば、日本はまだ産声をあげたばかりといっても過言ではありません。
戦後の復興ブームに乗って人口が東京一極に集中することによって、東京はまともな都市計画を練り上げる間もなく、日本を代表する超過密、乱開発都市になりました。
これでは不動産ビジネスの先達が何を考え、どんな解決策をとったのかを学ぶことはできません。
いまはグローバルスでも余り始めた画一的な居住用不動産のビジネスだけでは、なかなかプロにふさわしいビジネスはできません。
これからは一刻も早く不動産投資のプレーヤーとして名乗りを上げて、インテリジェンスのある不動産ビジネスを手掛けることです。
いまなら、さしたる競争相手がいない状態で攻め続けることができるはずです。
スタンダードばかりが注目されていますが、それよりも世界の長い歴史を持つ国々の過去のビヘイビアを学ぶことの方が有意義なのではないでしょうか。
例えば、徐々に定着しつつある定期借地権の功罪については、日本の歴史からは何の教訓も得られません。
先の借地借家法の改正では、一般定期借地権の借地期間を50年とすることでスタートしましたが、50年後に借地権がどう扱われるのかを日本の歴史から学ぶことは不可能です。
イギリスには、住宅問題だけでも実に200年間の近代化の歴史があります。
そのなかには、一7世紀には20年以下しか認められていなかった借地期間が、後に借地を地主に返還できない人達が急増して政治問題になり、貴族の私法制定という形で41年から51年に長期化され、一8世紀の61年、81年というさらなる延長に続いて、ついに一882年の承継財産設定地法によって、99年という超長期の借地期間の延長が認知されたという非常に興味深い歴史があります。
昨年香港が中国に返還されたのを例にして、「イギリスでさえ借地期間を守ったのだから借地は安全だ」と口癖のようにいっている大手企業の社長がいましたが、あまりにもイギリスの借地の歴史を知らなさすぎます。
また、最近定期借家権の創設論議が日本でも盛り上がっていますが、これも日本の歴史を見るだけでは不十分です。
自由な不動産取引を規制する悪法の代名詞のような印象のある「レントコントロール」の類は、なにも日本でだけ残っているわけではありません。
例えば世界一自由な都市といわれるニューヨークでも、戦時立法だったはずの住宅賃貸借規制はいまだに続いています。
昨年6月にも様々な廃止論争の末に、結局レントコントロール法の存続が決まったばかりです。
世界で日本だけが不動産の規制が厳しいわけではありません。
その都市特有の歴史のしがらみから抜け出せない都市が他にもあることを、日本の不動産プレーヤーはよく頭に入れておくことです。
その他にも、不動産ビジネスに関するヒントや先達は、外国の歴史やビヘイビアから学ぶのが一番です。
皆さんが攻めの不動産ビジネスをやり直そうとするなら、まずは世界の不動産ビジネスから学ぶことです。
これこそ新しい時代の不動産プレーヤーヘの第一歩となるはずです。
コンピュータを使えない日本の不動産プレーヤー世界の金融・不動産ビジネスは、もはやコンピュータなしでは機能しないといっていいほど、あらゆる分野でコンピュータ化が進んでいます。
特に情報通信の分野では、インターネットを使った情報公開を官民が競い合うように進めているのが大きな特徴です。
当局が不動産開発の規制に関する情報をインターネットを通じて公開している国は確実に増えています。
日本では、不動産業者の間で物件情報をどう流すか、だけが議論されていますが、まずは管轄する役所の側が情報公開する手段としてインターネットを普及させないことには、業界のインターネット化が進むとは思えません。
この点で日本の役所の対応は、かなり遅れをとっています。
一方で、不動産投資分析にコンピュータを使用する頻度も、日本では著しく低いままです。
アメリカでは、ノートパソコンを持ち歩いているのは金融と不動産の営業プレーヤーに多く、コンピュータ化こそが金融・不動産ビジネスの象徴とされています。
パソコンがこれだけ普及する以前にも、コンピュータを使った投資分析は、アメリこんな不動産プレーヤーは取り残される力の不動産プレーヤーのお家芸でした。
いまでは製造中止になってしまいましたが、H社が開発した小型コンピュータHは、大変な優れものでした。
日本では、「パッカード」の愛称で呼ばれていたこの小型コンピュータ一台で、たいていの投資分析はその場で行うことができました。
日本の金利計算ではあまりなじみのない複利計算も、パッカードに数字をインプットするだけで実に簡単に答が出せます。
日本の不動産プレーヤーでパッカードを持ち歩いている人はほとんどいないでしょう。
投資分析は会社に帰って大型コンピュータでやるか、誰かできる者に任せればいいと安易に認識している人がほとんどです。
日本の不動産業者がドンブリ勘定から抜けきれない理由は、この辺にあるのかもしれません。
不動産の投資分析に欠かせないIRR(投資収益率)の計算も、コンピュータを使えば瞬時にあらゆる分析が可能です。
例えば、次のような不動産投資を行うときにIRRによる投資分析は有効です。
不動産投資金額が10億円、投資予定期間が5年で、その不動産から得られる純収益が1年目、2年目が2000万円、3年目、4年目が2500万円、5年目が21000万円とほぼ2年ごとに上昇することが期待できる不動産があるとします。
投資家はこの不動産を、当面の投資環境からみて5年後に2割程度は値上がりした金額で売れると見込んでいますが、それによって5・5%程度の利回りが確保できればこの投資を実行しようと思っています。
これは果たして適切な投資といえるのでしょうか。
不動産の投資分析で大切なのは、あくまで将来の純収益を求めることです。
この場合の不動産の収益価格は、投資期間中毎年計上される純収益と、将来売却するときに発生する売却による回収額を現在価値に割り戻した金額の合計値ですから、まずは5年目までの毎年の純収益を求めます。
1年目に2000万円の純収益を得るとは、一年後に元金2000万円を得るために年利5・5%で運用するといくらの金額が必要かという複利現価を求めるのと同じ意味なので、2000万円×0・9479(複利現価率)U一896万円という現在価値が求められます。
同様に2年目から5年目までの純収益の現在価値を計算して各々合計すると、5年間で一億135万円という純収益が求められます。
これに5年目に得られる売却価格一2億円の現在価値9億1812万円を足した10億1947万円が、すべての現在価値の合計、すなわち純収益価格ということになります。
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